晩秋を迎え冬が迫るとメバル釣りがいよいよ好期を迎える。メバルといえば食味が良く、引き味も抜群で、対象魚の中でも非常に根強い人気を誇るターゲットであるが、その一番の魅力は何よりもゲーム性の高さであろう。これと比例し、メソッドが豊富な点もメバル釣りの醍醐味であるといえる。
ルアーで狙うメバル釣り(以下、メバリング)といえば、まだまだ歴史が浅い釣種に入る。それこそ、今から数年前まで遡ると、専用のタックルはなくロッドに関してはトラウトタックルや柔らかめのバスロッドを流用しているアングラーを多く見かけた。
しかし、メバルブームをここ数年で迎え、専門のタックルやメソッドが次から次へと紹介されるようになり、今もなお現在進行形で発展途上をしている。
この勢いを見る限り、メバリングが今後更に高いレベルへと成長していくことは火を見るより明らかであるといえる。
そんなメバリングの魅力に迫るべく、まずは基本的なメバルの生態・食性についてご紹介させて頂くとともに、実釣に役立つノウハウ、また、更に進化を遂げた斬新なアイテムをここでご紹介させて頂きたい。
メバルはカサゴ目メバル科に分類され、北は北海道南部から南は九州北部まで生息していると言われている。また、体長は最大で30cmほどまで成長すると言われているが、環境によってはそれ以上大きくなるビッグママも存在する。
釣期に関して一般的に11月から4月頃までがベストであると言われているが、頑張れば年中釣れないこともなく、年間を通しメバルを釣り上げている方もいる。
アングラー間においてはロックフィッシュと分類されているが、カサゴやソイ、アイナメなどと違い基本的にボトムでステイしていることは少なく、比較的自由にレンジを移動する魚である。しかし、その素性は未だ不明瞭な点が多いというのが現状だ。
はっきりしている生態特徴の一つに胎生魚ということが挙げられるが、これは多くの魚類が対照的で卵生魚にあたることから、この点が最も大きな特徴であるといえるのではないだろうか。
産卵期は12~2月頃となり、約4mmの稚魚をいっぺんに数千匹産むと言われている。 2008年には国内で専門家による分類学的な見直しが進められ、DNAによりアカメバル、シロメバル、クロメバルの3種に分けられた。これらは胸ビレの軟条数でも見分けられ、アカが15本、クロが16本、シロが17本である。
一般的に小魚やエビなどの甲殻類を捕食していると言われているが、自然界において実際は多くのメバルがこのようなベイトを捕食できていないという事実が存在する。
すでにメバル釣りにどっぷり浸かっているアングラーであれば薄々感じていることかも知れないが、釣りあげたメバルを家に持ち帰り、胃の中の残留物を観察してみると定説とは大きく違っているという点が一目瞭然に分かるのではないかと思う。
小魚や甲殻類が多く存在するような好フィールド、また春先など水温が上昇し一気にベイトが接岸してきたタイミングなどの好条件下は例外とすると、実は多くのメバルが小魚やエビなどを捕食しておらず、胃の中を占めている大半のものが流線状の多毛類(動物プランクトン)となる。もちろん、そこには地域性が作用していることもあり、一概に断定はできないが、実際は多くのメバルが同じ状態にある。
意外性が強い事実であるが、冷静に考えるとごくごく当たり前のことであるのに気付かれるのではないだろうか。一般的にアングラーがメバルをターゲットとする冬期はショアからの釣りであり、船釣りとは違って基本的に浅場がメインのフィールドとなる。
そこは当然水深が浅く、水温は下がり、水は澄みきって小魚やエビなど多くのベイトは水温が安定した深場へと自然に落ちていく。
つまり、メバル釣りを行うシーズンにおいては夏期と比べベイトの絶対数が少ない時期になるということだ。これは、捕食が得意でないメバルにとっては生死を左右する悪条件であり、一大行事であるスポーニングが絡んでなければいくら適水温であっても接岸することはおおよそありえない。
そのような中であっても何か口にしないと生きていけないことから多くのメバルが海中をスローに漂っている多毛類を口にしているというわけだ。
では、なぜ小魚やエビなどの甲殻類を捕食しているというような情報が定説化されてしまったのか、それはひょっとすると沖に存在するメバルを対象にしてしまったからではないかと考えられる。ここから先はあくまでも推測にあたるが、沖で釣れるメバルはベイトが豊富であり、おおよそ小魚やエビなどを中心に捕食しているのではないだろうか。
当然、多毛類と横に並べられると真っ先に目がいくのは小魚や甲殻類である。なぜなら、メバルにとって栄養価値があり、なにより美味しいものにあたるからだ。
以上のことを踏まえ、上記の点をメバル釣りに流用すると、どういう釣り方やルアーが有効となるのか、非常に大きなヒントを得ることが可能となるのではないだろうか。
メバルは上記、生態のパートで3種存在するということをお伝えしたが、やはり釣れる場所(ポイント)も同様、若干異なってくる。以下に各メバルにおいてもっとも代表的なポイントをご紹介したい。
一番釣りやすいメバルとして、やはりシロメバルが挙げられる。ポイントは一般的に定説である外灯下や係留している船の間、護岸のヘチやテトラ帯のブレイクなど、このメバルにおいてはほぼどのような場所においても生存している為、サイズさえ選ばなければもっとも釣りやすいメバルと言えるだろう。
次にアカメバルだが、釣り人から藻メバルと呼ばれるように基本的には藻場に生息しているメバルとなる。これらを踏まえ、もし専門に狙うのであれば予め明るい内に藻場を探索、その場所を記憶しておき日が暮れてからピンスポットに狙っていくと効率良くアカメバルを引き出すことができる。
最後にクロメバルだが、このメバルは潮通しが良い岩礁帯やストラクチャーを好む傾向が見られる。また、併せて3種の中でも回遊性が高いメバルだと言われている。つまり、1匹釣れると続けて釣れるチャンスが高いということだ。
以上、3種の代表的なポイントを挙げさせていただいたのだが、同ポイントにおいて混ざって釣れることももちろん多く存在する。その為、これらのことはキッチリと頭の中で整理することなく、一つの知識として押さえておく程度で良いだろう。大事なことはメバル全体が好むエリアの見分け方だ。上記のことを踏まえ、様々なメバルを釣って頂きたい。
メバルのルアー釣りに関して、タックルバランスはエサ釣りよりもシビアに考えることが求められる。なぜなら、エサ釣りと違いルアー自体に集魚力が少ないからだ。つまり、エサの場合はメバルを寄せることが可能となるが、ルアーの場合だと自分から歩み寄ることが必要になる。これを補う為には飛距離はもちろんのこと、フッキングや魚のコンディションまで掘り下げて考えないといけない。参考程度となるが、下記に一般的な使用タックルとアイテムチョイスの考え方を紹介させて頂きたい。
ロッド選択においては釣り場や対象魚の大きさ、また、ラインとの相性や拘りなどにより選ぶものが大きく変わってくる。例えば、地磯帯やテトラ帯で尺クラスのメバルを狙うのであれば当然、長く強いものが求められる。一方、波止の外灯下で20cmまでの小型メバルがメインターゲットであればレングスも特段長いものは必要なく、柔らかいロッドでないとフッキング率が悪くなるのはおろか、せっかくヒットしたとしてもメバルの引きすら楽しめない。
また、PEラインをメインに使用する方であればショートバイトを軽減させる為にティップが少し柔らかいもの、逆にナイロンラインをメインに使用する方であれば貫通力を補う為にロッド自体が硬いもの、それ以外、数はいらないけど大型がバイトしてきたら確実にガッシリとフッキングさせたい方などは硬いロッドにあえてPEラインを使用したりする。このように自身がどういう釣りをやりたいのかによって使い分けることでメバルを戦略的に攻略することができるようになるのだ。
4lbラインが100mほど巻ける程度の小型リールを使用する。ただし、品質的には極力良いものをオススメしたい。なぜなら、ナイトゲームがメインとなる為、できる限りライントラブルを減少することと、冬場の夜間悴んだ手であってもストレス無く長時間リーリングできるものが求められるからだ。また、細いラインを使用することもあってドラグ性能も滑り出しが良いものの方が当然キャッチ率も上がるといえるだろう。以上の点を踏まえ、リール選択の基準にして頂きたい。
メバリングで使用するラインはナイロンライン、フロロライン、PEラインの3種類がある。それらを釣り方によって使い分ける事がベストとなるが、まずはその特性を理解し自分の釣り方に合っているものを選択しよう。
①ナイロンライン
しなやかでリールに良く馴染むのでトラブルが少なく初心者にオススメのラインである。伸縮率が非常に高いことからバイト時に弾かず食い込みが良く、不意な大物が掛かったとしてもショックを吸収してくれるので合わせ切れ防止にも繋がる。ただし感度がイマイチであるため基本的には向こう合わせで釣ることを前提として使用すると良いだろう。
②フロロライン
硬くて高比重というのがフロロラインの大きな特徴である。そのためメバリングの大敵である風に強く、更に感度が高いのでスレたメバルのシビアなアタリを明確に捉えることが可能である。また、根ズレにも強くボトム付近の大型狙いでは最適なラインと言えるが、その硬さから巻き癖が付きやすく、それほど飛距離は望めない。また、この特性がライントラブルを誘発する原因でもあるので慣れないうちはナイロンラインを使用するのが無難である。
③PEライン
伸縮率が低いことから抜群の感度を誇るラインで、海中の状況や魚のちょっとした信号を読み取ることが可能であるためナイトゲームがメインのメバリングに適したラインである。引っ張り強度も高く耐久性に優れていて、細い番手のものを使用出来るので軽量リグをできる限り遠くに飛ばしたい時にも有効。ただし、その伸縮性の低さからショートバイトを誘発しやすいことや、少しでも風が強いとラインが流され仕掛け全体が浮き上がってしまうなどのデメリットもあり、更にライントラブルも頻発するなど、まさに諸刃の剣である。よって上級者向けのラインと言える。
これらの特性を理解し、その中で自身がどの点を優先したいのか、また、自身が通っているフィールドにどのラインがマッチしているのかを考慮し使い分けて頂くと良い。
一昔前であればワームなどのソフトルアーやミノー、スプーンなどのハードプラグが主流であったのだが、現在においてはソルトフライやカブラなどといった新しいマテリアルのアイテムが次々にリリースされ、更にメバル釣りの幅が広く、そして奥深くなると同時に様々な状況を攻略しやすくなった。
もちろん、これらにもラインやロッド同様、それぞれに有効な用途があり、使い分けることで今よりももっと多くのメバルを手中に収めることが可能となるはずだ。他人よりもっと多く釣りたい、一回り大きいのを釣ってみたい、あの時もしあのルアーを使っていればもっと数や型を狙えたんじゃないか、などと思われている方も多いはず。
これらの願望をかなえる為に近道となるのは、今まで主流としていたルアーに何かしら+αの要素を加えることだ。もちろん、場所を変える、釣り方を変える、などのやり方もあるが、何よりも簡単にできることは数多くのルアーを揃えること、更に簡素化するとすればルアー自体のマテリアルを変えることである。
そう、マテリアルが違えば釣果も変わる。今までにないマテリアル「ソルトフライ」の威力をぜひ実感して頂きたい。
①メバルのレンジの考え方
オーシャンルーラーでは更にメバルを釣る為、飼育を行っているのだが、これに基づいた情報をお伝えしたい。
飼育を行うにあたり、エサを与えることは欠かせないことであるが、この中で分かったことは、メバルは自身がいるレンジより下に落ちた捕食物に関しては全く興味を示さないのである。つまり、これを釣りに流用すると必ずメバルのレンジより少し上側をトレースさせる必要があるということである。
メバルを釣る為のレンジについては三者三様であるが、一般的にセオリーとされているトップレンジ⇒ミドルレンジ⇒ボトムレンジといった狙い方はメバルの生態に基づいた間違いでない情報であるといえる。しかし、水槽飼育を振り返ってみても、大型はやはり警戒心が強く小型は薄いせいか、日常から表層近くには小型が多く浮き、ボトムには大型が存在するという場合が多い。
つまり、大型1本狙いなのであれば、ボトムレンジを中心に攻めるパターンの方が効率良いというのもあながち嘘ではないといえる。なぜなら、表層から探っていけばボトムにいるメバルは何度もルアーを目にすることとなり、いざボトムまで落ちてきても、その時にはすでに警戒心を抱き、口を使わないことも考えられるからだ。
このことから小型から中型までを数釣りしたいのか、それとも数は出ないが大型を仕留めたいのかによってトレースさせるレンジを変えていくと良いだろう。
ただし、冒頭でも述べさせて頂いたが、メバルは自身より下に落ちた捕食物には目がいかないといった生態を持ち合わせている。その為、ボトムといっても底から20cm~30cm程度浮かせたレンジをトレースさせるのが正解であるといえよう。
②アクションについて
アクションに関しては、夜間であれば基本的にタダ巻きでスイミングさせるだけで構わない。このときのリーリングスピードは低活性になればなるほど遅く、高活性になるほど早く巻くと良い。一般的にメバルのレンジが浅い場合においては高活性であると判断し、逆の場合は低活性であると判断すると良い。ただし、外灯下や満月で水が透き通っている場合などにおいては細かなトゥイッチングなどのアクションを少し入れた方が釣りやすくなり、これは日中においても同様であるといえる。
③リグについて
リグに関して、一般的にはフロートリグ、ジグヘッドリグ、スプリットショットリグ、キャロライナリグ、ライトテキサスリグなどが主流となる。それぞれのリグにおいて一長一短の性質を持ち合わせていることから、状況を理解した上、マッチしたリグ作りが求められる。当然、これらを適切にできるか否かで釣果は大きく左右する為、それぞれのリグの特性を理解することが必要となるだろう。
例えば、風が強いときや浅い場所であればフロートリグ、ショートバイトが続き、どうしても感度を得たいのであればライトテキサスリグ、操作性を求めるのであればジグヘッドリグ、水中でルアーを自然に漂わせたいのであればスプリットショット、更に感度を求めるならキャロライナリグといった要領である。
④ソルトフライについて
メバルのルアーは各社から様々なアイテムがリリースされていることは先述した通りである。そこで併せてソルトフライのご紹介もさせて頂いたのだが、そもそもなぜソルトフライがメバルに効くのか、また、数あるソルトフライを実際にどのように使い分ければ良いのか、きっと迷う方も多いはず。そこで、ここでは実際にこれらの疑問にお答えしたい。
(ソルトフライがメバルに効く理由)
大きく分けると3点挙げられる。
1点目は何よりも自重が軽いということだ。どういうことかというと、メバルはアジやイワシなど青物系のバイトのように、追跡することはない。捕食物を見つけると静かに近づき、ある一定の距離まできたところで一気に吸い込んで捕食を行うのである。つまり、この捕食物がルアーとなった場合、軽ければ軽いほど、口の中に納まりやすい=フッキングしやすいということになるのだ。
続いて2点目だが、ハードプラグやワームでは作り難い細部、例えば、虫の足など、これらを本物そっくりにイミテーションさせやすい点があげられる。よりリアルで精巧、マッチザベイトさせやすいルアーをソルトフライでは演出できるのである。
最後に3点目だが、これは主にワームとの比較となる。どういうことかというと、ソルトフライはエサ盗りに強く、ワームのように切られたり、ズレたりしない為、手返しも良く、めんどうさも感じさせない。つまり、途中でフグにかじられ、ルアーが不意な動きをしてしまった結果、メバルをヒットさせることができなかった、あるいは、フグにかじられた為、ワームを交換する時間を必要とした、というケースも防げるわけだ。しかし、それよりも大きなメリットとしてはストレスがないことで心身ともに安定した状態で釣りができることだ。イライラして冷静さを失うと、必要となる判断力に欠け、当然魚釣り自体が成立しなくなってくる。
メバルに抜群に効くルアー「ソルトフライ」の答えは、つまり、これらのメリット部が連鎖し相乗して生まれた効果であるといえる。
(ソルトフライの使い分け方)
ここでは難しく考えずに、簡単にご紹介させて頂きたい。
まずは、食性の部分で先述させて頂いた通り、メバルが厳寒期に捕食しているものは流線上の多毛類が主となる。こういった状況下では多毛類をイミテートした「ソルトビートル」がもっとも効果的となる。
しかし、当然メバルが釣れるのは冬期だけではない。シーズンイン、いわゆる晩秋にあたる頃はまだまだ水温が温かく、ベイトが豊富であり、多毛類以外でも美味しい捕食物が多く存在する。こういった状況下でメバルを釣るときは、捕食物がシラスなど小魚の場合、マイラーチューブで小魚のギラツキをイミテートした「ドラゴンフライ」、それ以上の大きなベイトを捕食しているのであればシルエットが少し大きい「ウェーバーライツ」、また、甲殻類を捕食しているのであればエビを模した「クリル」がふさわしい。
厳しい冬が過ぎ、春先から初夏の間は、産卵から孵化した子イカがターゲットとなる場合が多い。このようなときには子イカを似せた「カラマリ」がもっとも効果的となる。
以上がソルトフライの一般的な使い分け方だが、もちろん何に興味を示すのか、それは、その日その場のコンディションにより大きく変わる。このことから上記だけに囚われず、様々な使い分け方を楽しんで頂きたい。